金融所得を申告しなくても保険料・医療費が増える?制度改正に注意!

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株式の配当金や投資信託の分配金、株式売却益などの金融所得は、確定申告の方法によって税金だけでなく、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・医療費の窓口負担に影響することがあります。実は今、申告不要制度を選択しても、一定の配当所得が保険料や医療費負担の判定に反映される方向で制度改正が進められています。本記事では、金融所得と保険料・医療費負担の関係、今後の改正内容、注意すべきポイントを分かりやすく解説します。

金融所得には配当所得と株式譲渡所得がある

金融所得には大きく分けて、上場株式や投資信託の配当・分配金に関する配当所得と、株式や投資信託を売却したことによる株式譲渡所得があります。

証券会社で源泉徴収ありの特定口座を開設している場合、証券会社が1年間の損益や配当を集計し、税金(所得税・住民税)を源泉徴収してくれます。そのため、それらの配当所得・株式譲渡所得は、申告しなくても課税関係を完結させることができます。これが申告不要制度です。

一方で、税金を取り戻すためにあえて確定申告をすることもできます。

所得の種類 主な内容 申告方法
配当所得 上場株式の配当金、投資信託の収益分配金など 申告不要、申告分離課税、総合課税
株式譲渡所得 株式・投資信託等の売却益 申告不要、申告分離課税
NISA口座内の所得 NISA口座内の配当・売却益 非課税。確定申告不要

なお、NISA口座については非課税であり、今回解説する保険料や医療費負担への影響とは基本的に関係ありません。

あえて確定申告するメリット

源泉徴収ありの特定口座であれば、通常は確定申告をしなくても済みます。しかし、あえて確定申告することで税金が安くなるケースがあります。

配当所得を申告するメリット

配当所得を申告分離課税で申告すると、上場株式等の譲渡損失と損益通算できます。例えば、配当が30万円あり、同じ特定口座内または他の特定口座で株式譲渡損失が10万円ある場合、申告によって差引20万円を所得として扱うことができます。

また、配当所得を総合課税で申告すると、配当控除を受けられる場合があります。さらに事業所得や不動産所得に赤字がある場合、一定の条件のもとで損益通算できるケースもあります。

株式譲渡所得を申告するメリット

株式譲渡所得についても、複数の特定口座間で損益通算できるメリットがあります。

ケース 内容 申告による効果
複数口座の損益通算 A証券で50万円の利益、B証券で10万円の損失 50万円-10万円=40万円に圧縮
譲渡損失の繰越控除 前年に20万円の損失、翌年に60万円の利益 60万円-20万円=40万円に圧縮

このように、確定申告をすることで所得税の還付を受けられたり、住民税を減額できることがあります。

確定申告すると保険料や医療費負担が増えることがある

問題は、確定申告によって所得税・住民税が減ったとしても、別の負担が増えることがある点です。

源泉徴収ありの特定口座で申告不要制度を選択した場合、その金融所得は原則として保険料や各種所得判定に含まれません。しかし、確定申告をすると、その金融所得が合計所得金額や総所得金額等に反映されることがあります。

その結果、次のような影響が出る可能性があります。

  • 国民健康保険料が増える
  • 後期高齢者医療保険料が増える
  • 後期高齢者の医療費窓口負担が1割から2割・3割になる
  • 配偶者控除や扶養控除の判定に影響する
  • 住宅ローン控除が受けられなくなる可能性がある

住宅ローン控除にも影響する場合がある

住宅ローン控除は、その年の合計所得金額が一定額以下であることが要件となっています。例えば合計所得金額が2,000万円を超えると、住宅ローン控除を受けられなくなる可能性があります。

金融所得を申告したことによって合計所得金額が2,000万円を超えると、たとえ税金を還付できたとしても、住宅ローン控除を失うことで大きく損をする可能性があります。

例えば認定長期優良住宅などでは、住宅ローン控除額が年間30万円を超えるケースもあるため、金融所得の申告は慎重に判断する必要があります。

後期高齢者の医療費負担にも影響する

後期高齢者医療制度では、医療費の窓口負担は原則1割ですが、所得に応じて2割または3割となる場合があります。

金融所得を確定申告すると、その所得が判定に含まれ、医療費の自己負担割合が上がる可能性があります。

例えば、年間の医療費自己負担が5万円だった人が、自己負担割合1割から2割になると、単純計算で負担額は10万円になります。保険料の増加だけでなく、医療費負担も増える可能性があるため、後期高齢者の方は特に注意が必要です。

今後は申告不要でも配当所得が把握される方向へ

これまでは、源泉徴収ありの特定口座で申告不要制度を選択すれば、金融所得は保険料や医療費負担の判定に含まれないというメリットがありました。

しかし今後、上場株式の配当などについては、申告不要制度を選択した場合でも、後期高齢者医療保険料や医療費自己負担割合の判定に反映される方向で制度改正が進められています。

つまり、確定申告をしないことで保険料や医療費負担への影響を避けるという従来のメリットが、将来的に弱まる可能性があります。

具体例:配当50万円で保険料・医療費負担が増えるケース

厚生労働省の資料では、夫婦ともに75歳以上の世帯で、夫に年金230万円、上場株式の配当50万円があり、妻は基礎年金のみという例が示されています。

現行制度では、配当所得を申告しなければ、後期高齢者医療保険料や医療費負担の判定に含まれません。一方、申告すると所得に含まれ、負担が増える場合があります。

項目 申告しない場合 申告した場合
後期高齢者医療保険料 約11.8万円 約16.9万円
医療費の自己負担割合 1割 2割

この例では、保険料だけで年間5万円超の負担増となり、さらに医療費の自己負担割合も1割から2割に上がる可能性があります。

今後の改正により、たとえ申告しなくても配当所得が把握されるようになると、こうした負担増を避けにくくなる可能性があります。

なぜ申告していない配当所得が把握されるのか

では、確定申告していない配当所得を行政はどのように把握するのでしょうか。

予定されている仕組みでは、証券会社などに法定調書の提出義務を課し、配当の支払情報を行政側が把握できるようにする方向です。

つまり、本人が確定申告しなくても、証券会社等から提出される情報によって、配当所得が保険料や医療費負担の判定に利用される可能性があります。

いつから制度改正されるのか

現時点では、直ちに制度が始まるわけではありません。

まずは証券会社等に法定調書の提出義務を課す制度が整備され、その後、配当所得を保険料や医療費負担の判定に反映する流れになると考えられます。

制度開始時期は、法律公布(2026年6月5日)から5年以内の政令で定める日とされる見込みで、具体的な開始時期は今後の政令等で決まることになります。

そのため、すぐに改正の影響は受けませんが、将来的な資産運用や高配当株投資の方針には影響する可能性があります。

今後予想される流れ

今回の見直しは、まず後期高齢者の配当所得を対象にしたものと考えられます。

しかし、将来的には次のような方向へ広がる可能性もあります。

  • 株式譲渡所得も対象になる
  • 現役世代の国民健康保険料にも反映される

現時点ではすべてが決定しているわけではありませんが、金融所得を保険料や医療費負担に反映させる方向性は強まっていると考えられます。

対策として考えられること

今回の見直しは、現時点では上場株式の配当などが中心です。そのため、高配当株を多く保有している方は、保険料や医療費負担への影響を含めて資産運用方針を見直す余地があります。

考えられる対策としては次のようなものがあります。

  • 高配当株への偏重を見直す
  • 値上がり益中心の運用へ一部切り替える
  • NISA口座を優先的に活用する
  • 申告した場合・しない場合の影響を毎年シミュレーションする
  • 配偶者控除・扶養控除・住宅ローン控除への影響も確認する

特にNISA口座については、配当や売却益が非課税であり、今回の保険料・医療費負担の見直しとも基本的に関係しません。今後はNISAを優先的に活用する重要性がさらに高まる可能性があります。

まとめ

これまでは、源泉徴収ありの特定口座で申告不要制度を選択することで、保険料の増加を防ぐことができ、医療費負担の割合を引き上げないで済むというメリットがありました。

しかし今後、上場株式の配当などについては、申告不要制度を選んだとしても行政側が所得情報を把握し、後期高齢者医療保険料や医療費の自己負担割合に反映する方向で制度改正が進んでいます。

特に注意すべき方は次のとおりです。

  • 高配当株を多く保有している方
  • 後期高齢者医療制度の対象者
  • 扶養控除・配偶者控除に影響しそうな方
  • 住宅ローン控除を受けている方

金融所得の申告は、所得税・住民税だけで判断してはいけません。保険料、医療費負担、扶養、住宅ローン控除まで含めた総合的なシミュレーションが重要です。

 

YouTubeでも詳しく解説しているので、是非ご覧ください。

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