IT企業の皆さま、研究開発税制と聞くと「製造業向け」「大企業向け」と思っていませんか?
実は現在の研究開発税制は大きく拡張され、ソフトウェア開発企業・SaaS・AI開発企業・システム受託開発企業など、IT企業も幅広く対象となっています。
国の資料でも、研究開発税制は日本の研究開発投資を維持・拡大するための最も重要な税制と位置づけられており、民間企業のイノベーション支援として強力に後押しされています。
(参考:経済産業省「研究開発税制の概要と令和5・6年度改正」より)
目次
研究開発税制とは?
企業が支出した試験研究費の一定割合を、法人税から直接控除(税額控除)できる制度です。
節税効果が高く、利益が出ている企業にとっては大きな減税となることがあります。
IT企業でも対象になる理由
研究開発税制の対象となる「試験研究費」は、研究施設で行うような研究や実験の費用に限りません。
ソフトウェア・AI・アルゴリズム開発・DXツールの高度化・クラウド基盤の新技術開発なども対象です。
実際、国のデータでも IT・サービス業の適用件数は年々増加しており(※令和4年度:サービス業17.1%、情報通信も広く含む)、
研究開発は「製造業だけのもの」という古いイメージは完全に過去のものとなっています。
研究開発税制には2種類ある
① 一般型・中小企業技術基盤強化税制
企業の年間研究開発費に対し、以下の割合(一般型)を法人税から控除することができます。
- 控除率:1〜14%
- 控除上限:法人税額の20〜50%(売上高試験研究費割合・増減試験研究費割合による上乗せあり)
また、一定の中小企業は、上記の一般型に代えて中小企業技術基盤強化税制を適用することができます。控除率、控除上限は以下の通りです。
- 控除率:12〜17%
- 控除上限:法人税額の25〜35%(売上高試験研究費割合・増減試験研究費割合による上乗せあり)
② オープンイノベーション型
大学や国の研究機関などとの共同研究・委託研究を行った場合に適用される税額控除で、控除率は20〜30%と非常に高い点が特徴です。
- 大学・研究機関との共同研究・委託研究 → 30%
- スタートアップ企業等との共同研究・委託研究 → 25%
- その他民間企業等との共同研究・委託研究 → 20%
法人税の最大10%まで控除することができます。
どんなIT関連プロジェクトが対象になる?
以下のような開発は、多くが「試験研究費」と認められる可能性があります。
- AIモデルの精度向上・アルゴリズム改善のための研究
- SaaS・自社サービスの機能高度化のための技術開発
- 新しい暗号化技術・通信プロトコルの研究
- 大規模データ処理基盤の性能改善のための検証
- 画像認識・自然言語処理などの技術開発
- PoC(概念実証)を含む実験的な開発プロジェクト
逆に「単なる保守・運用・顧客ごとのカスタマイズ」は対象外になることもあるため、注意が必要です。
実際の税額控除額のイメージ
例えば IT企業が年間 3,000万円の研究開発費を支出している場合、
3,000万円 × 10%(控除率の例)= 300万円の税額控除
この300万円はそのまま法人税から差し引けるため、節税効果が非常に大きい制度です。
令和5〜6年度の重要な改正ポイント
- 控除上限額・控除率のインセンティブ強化・メリハリ付け
- スタートアップとの共同研究促進
- 試験研究費の範囲の見直し
まとめ:IT企業こそ研究開発税制を活用すべき
クラウドサービスの利用料、人件費、外注費など、IT企業の多くの支出が研究開発費として認められる可能性があります。
換言すれば、税額控除を使わない=本来受けられる節税メリットを捨てている状態かもしれません。
当社では、IT企業の研究開発に対する深い知見をもとに、有利な形で研究開発税制の適用を支援します。


