目次
主な改正点
● 年収の壁引き上げに伴う控除の改正
今回の改正では、以下の控除が拡充されました。
- 基礎控除の引き上げ(大部分の納税者が対象)
- 給与所得控除の一部引き上げ(対象者限定)
特にパート・学生アルバイト層の負担減として、前年より控除額が大きくなっています。
● 特定親族特別控除の新設
新たに「特定親族特別控除」が創設され、学生世代の“働き控え”を緩和する狙いがあります。従来より複雑な控除体系となっているため、今年の年末調整では注意が必要です。
● 扶養親族等の所得要件の引き上げ
扶養控除などを受けられるかどうかを判断するための、家族の所得要件が引き上げられました。家族構成によって影響が大きいため、控除漏れが起こらないように注意が必要です。
年末調整の処理フローと実務上の注意点
今回の改正は年の途中で決定されたため、実務上は次のような流れになります。
- 1~11月:従来制度に基づき源泉徴収を実施
- 12月:改正内容を反映して年末調整で一括調整・還付
特に12月の還付額が大きくなるケースもあり、給与担当者は早めの準備が重要です。
年末調整で使用する4つの主要書類
今年も年末調整では「おなじみの3つの書類」に加え、住宅ローン控除を受ける人については、「住宅借入金等特別控除申告書」が作成対象です。
① 扶養控除等申告書(通称:マル扶)
令和7年分については書式改正はありませんが、 過去に提出した内容から変更がある場合は、改めて記載が必要です。
令和8年分については改正があるため、来年以降は注意が必要です。
② 基礎控除申告書・配偶者控除等申告書ほか(通称:マル基配特所)
正式名称は 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」。 今年最も大きな改正があった書類で、特定親族特別控除の欄が新設されています。
③ 保険料控除申告書(通称:マル保)
生命保険料・地震保険料などの控除に関する書類です。 今年は書式の改正はありません。
④ 住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン控除を受けるための書類)
住宅ローン控除の2年目以降に年末調整で利用する書類です。 初めて控除を受ける年は、年末調整により控除を受けることはできず、必ず確定申告が必要となります。
家族構成による控除の整理と具体例
以下のような「5人家族のケース」を例に、書類の書き方を例示します。
- 本人:給与収入 900万円
- 配偶者:給与95万円、退職金50万円
- 長男(学生):給与収入149万円の見込み
- 長女(中学生)
- 母(年金収入100万円/障害者控除の対象)
控除の可否は12月31日時点の年齢に基づいて判断します。
また、扶養控除などの適用可否の判断のため、家族全員の「所得(収入ではなく所得)」の把握が必須です。
<書類の記載例>
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書(通称:マル基配特所)
保険料・iDeCo(イデコ)などの控除書類について
生命保険料・損害保険料・国民年金・国民健康保険・iDeCoなど、本人が1年間に負担した保険料は、すべて控除の対象です。
特に以下の方は記載漏れに注意してください。
- 途中で無職期間があった方(国民健康保険料、国民年金保険料の記載漏れ)
- フリーランスから会社員に転職した方(国民健康保険料、国民年金保険料の記載漏れ)
- 今年から iDeCo を始めた方
保険料控除証明書を入手し、正確に記入しましょう。
まとめ:今年の年末調整は「複雑化」しています
今年は控除の新設・改正が多く、前年と比べても年末調整が複雑になっています。
特に次の2点が重要です。
- 12月31日時点の家族の年齢・所得の正確な把握
- 新しく追加された控除(特定親族特別控除等)の漏れがないか確認
控除の取りこぼしを防ぐためにも、早めに書類を確認し、必要な証明書を揃えておきましょう。
永井コンサルティングでは、年末調整、給与計算の代行を行っております。
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