第1期の決算を12か月や「11か月+○日」にしてはいけない場合とは?

記事更新日:

法人を設立した際、「いつを決算月にすべきか」は非常に悩むところです。
ここでは、決算月を何月にすべきか、一般的な考え方を解説し、第1期を「11か月+〇日」や、「12か月ちょうど」といった、設立月からなるべく遠い月にしてはいけないケースについても解説します。

基本的には設立月からなるべく遠い月に設定する

多くの会社が採用しているからという理由だけで、3月決算や、12月決算を選ぶ事業者は意外と多いようです。ただし、特段の理由がある場合を除いて、決算月を決めるにあたり「右に倣え」といった考えは不要です。
実務上は、次のような要素を考慮することが重要です。

①原則として「設立月からなるべく遠い月」に決算月を設定する
決算日は、法律上は月末だけでなく365日いつでもOKです。ただし、月末以外を決算日とするのは事務処理が非常に面倒であるため、特段の事情がなければ月末にしましょう。
そして、第1期はできる限り長く設定することで、以下のようなメリットがあります。

決算までの時間に余裕ができる:設立後すぐに決算となれば、法人運営に慣れていないうちに決算業務を行うことになり、致命的なミスにもつながりかねません。そのために、第1期はなるべく余裕を持って決算を迎えられるよう、決算月は設立日からなるべく遠くの月にした方がよいでしょう。

しっかりと決算対策ができる:第1期は、業績がどうなるか全く読めないもの。そのため、なるべく長い期間を設定することにより、可能な限り経費を計画的に支出するなど、決算対策を行うことにより、節税につながります。
例えば、5月中の設立であれば、一番遠い月である6月末に設定します。

②申告・納税月が繁忙期に重なる場合は避ける
決算日の2か月後が法人税の申告・納税期限です。例えば、12月決算にすると、申告は2月末ですが、2月末が法人の繁忙期となれば、特に従業員数が少ない法人であれば、役職員への決算の負担が重くなり、余裕を持った決算作業ができなくなる可能性があります。
また、会計事務所に決算を依頼している場合は、可能であれば会計事務所の事情も考えた方がいいでしょう。多くの会計事務所では2月〜3月と、5月が繁忙期となるため、できれば、その月が申告・納税月になる3月決算や12月決算は避けた方がよいです。

③資金繰りが厳しくなる時期を申告・納税月に設定しない
たとえば売上が少ない月や賞与支給月と納税時期が重なると、資金繰りに支障をきたすことがあります。納税のタイミングとキャッシュフローも考えるようにしましょう。

消費税の免税期間を意識する

そして重要なのが、消費税の免税期間がなるべく長くなるように設定することです。設立当初からインボイス登録を行う場合や、消費税の還付申告を行う場合は別ですが、そうでなければ、免税期間は長い方が消費税の節税になります。
基本的には、前述の通り、設立月からなるべく遠い月に決算月を設定すれば、免税期間をなるべく長く取れます。
ただし、消費税の「特定期間」の落とし穴に注意しなければなりません。

◆原則ルール
法人の資本金が当初から1,000万円以上である場合を除き、設立から2期間は自動的に消費税の免税事業者になります。つまり、第1期と第2期は、課税売上がいくらあっても免税事業者でいることができます。一方で、第3期からは、2期前(基準期間)の課税売上が1,000万円超であれば、課税事業者になります。

◆例外:特定期間ルール
ただし、「特定期間」の例外規定に引っかかると、2期目から強制的に課税事業者になってしまう可能性があります。

「特定期間」とは?
原則として、前年度の開始日から6か月間を「特定期間」といいます。12月決算の法人であれば、上半期の1/1~6/30が特定期間です。

この6か月間において、
ⅰ)課税売上高が1,000万円超
かつ
ⅱ)給与支払額(役員報酬含む)が1,000万円超
であれば、翌期から消費税の課税事業者になってしまいます。

また、設立当初の資本金にも注意しなければなりません。第1期と第2期は、基準期間(2期前)がないため、原則として上述の通り免税事業者となりますが、「事業年度の開始の日に資本金の額が1,000万円以上であれば、消費税の課税事業者となる」特例があります。よって、設立日から資本金が1,000万円以上であれば第1期から、第1期中に増資を行い、資本金の額が1,000万円以上となれば第2期から、課税事業者になってしまうので、設立当初の資本金の額には要注意です。

法人成りや軌道に乗っている企業は特に要注意!

前述の特定期間ルールがあるため、特に次のようなケースでは、2期目からうっかり消費税の課税事業者になってしまうことがあります。

・個人事業からの法人成りで、法人設立直後から売上・役員報酬が高い場合
・スタートアップ企業など、初年度から事業が急成長している場合
・合弁企業など、法人設立当初から大規模に事業を行う場合

このような企業は、設立直後の6か月間で売上・給与ともに1,000万円を超える可能性があるため、特定期間ルールに気をつけなければなりません。

対策として、第1期をあえて7か月以下にする

実は、事業年度が7か月以下である場合、特定期間ルールは適用されません。よって、第1期をあえて7か月以下にすることにより、設立直後から売上・給与が多くても、2期目まで免税事業者でいることができます。
たとえば、8月中の設立であれば、翌年2月末決算とすることにより、第1期が7か月以下となり、特定期間ルールを回避することができます。

なお、月の途中(1日以外)を設立日にした場合、特定期間は例外的に設立日から6か月間とはなりません。具体的には、5/15が設立日の場合で、例えば12月末が決算日であるなど月末が決算日である場合、6か月後の11/14までが特定期間となるわけではなく、11/14の前月末日である10/31までが特定期間となります。
つまり、特定期間は5か月半となります。

決算日の変更も可能

ちなみに、特定期間の規定にひっかかった場合(第1期の開始からの6か月間の課税売上高および給与支払額が共に1,000万円超となった場合)、第2期から課税事業者となることを回避するために、決算期変更をすることも可能です。つまり、もともと第1期を8か月以上に設定して、特定期間ルールにひっかかってしまった場合は、事後的に第1期を7か月以下にするように、決算期変更を行えば、特定期間ルールを回避することができます。

決算月は、いつでも変更できますが、変更するとなると、定款変更などの煩雑な手続きが必要となります。よって、特定期間の規定にひっかかりそうな場合は、あらかじめ第1期を7か月以下にするように設定しましょう。
設立時から会計事務所や税理士と契約している場合は、よく相談したうえで、最適な決算月を初期の段階で検討することをおすすめします。

 

YouTubeでも詳しく解説しているので、是非ご覧ください。

この記事のカテゴリー:役立つ知識
  • カテゴリーなし
お電話でのお問い合わせ
受付時間:10:00-18:00
メールでのお問い合わせ
24時間365日受付中

    このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

    ページトップへ戻る