医療法人とMS法人の役員・社員の兼任

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MS法人とは、メディカルサービス(Medical Service)法人の略称で、医療機関(個人および医療法人)と密接な関係がある営利法人(株式会社・合同会社等)をいいます。法律上の用語ではありませんが、厚生労働省の資料でも出てくる一般的な用語となっています。医療機関の経営者(院長など)が、後述の目的のために設立する会社のことをいいます。
以下、医療法人に併設されるMS法人を前提として、MS法人および役員・社員の兼任について解説します。

MS法人を設立する目的として、主なものは以下の通りです。
①医療法人で行うことができない事業を行う
②職種が違う従業員に適用する就業規則等を分ける
③所得分散等による節税を行う
おそらく多くの方は、③の目的の比重が一番高いと思われます。具体的には、MS法人が以下の業務を行い、医療機関から金銭を受け取ることにより、MS法人へ所得の一部を分散させます。
・経営コンサルティング
・不動産賃貸
・医療事務、経理事務
・医療器のリース、レンタル
・売店、食堂の運営
所得をMS法人へ分散させることにより、資本金1億円以下の法人について、年間800万円以下の所得に対する低い法人税率15%の適用を、医療法人、MS法人それぞれで受けることができ、トータルの税額を抑えることができます。(その他、MS法人による節税策や注意点などは別の記事で解説します。)

原則として、医療法人の役員と、MS法人の役員・職員の兼任は認められません。これは、MS法人が実質的に医療法人を支配することにより、医療法人の非営利性が損なわれる可能性があるためです。つまり、医療法人の利益をMS法人へ移転させ、MS法人の株主に利益配当を行うことも実質的には可能となってしまいます。医療法人を設立する際には、医療法人の役員とMS法人の役員・職員の兼任が見られれば、都道府県の指導が入る可能性は高いので、避けた方がよいでしょう。
もっとも、医療法人とMS法人の取引が少額である場合等、医療法人の非営利性を損なう可能性が低ければ、兼任が認められる場合もあります。

そこで、医療法人の社員とMS法人の社員を兼任することが考えられます。ここでいう「社員」とは、一般的な意味での社員ではなく、議決権を有し、法人を支配する地位にある者を指します。株式会社であれば「株主」に相当します。医療法人の社員とMS法人の社員の兼任は認められるのでしょうか?
この点、一律に認められないという規定はなく、「兼任により営利法人であるMS法人が、医療機関の開設・経営の責任主体となる恐れがある場合には、営利目的の医療機関の運営がなされる可能性があるため、兼任を行うことはできない」とされています。
よって、医療法人設立の際に、医療法人の社員とMS法人の社員の兼任を予定している場合は、MS法人が医療機関の開設・経営の責任主体とならないための配慮が必要です。
当社が携わった医療法人化の案件では、「MS法人が、実質的に医療法人の開設・経営の責任主体となることはない」旨の文書の提出を求められたケースがあります。このような文書を求められた場合、提出をしなければ医療法人設立の認可が下りない可能性があるので、要注意です。社員を兼任させたければ、文書の提出要求に応じた方がよいでしょう。

以上より、役員の兼任よりは、社員の兼任の方がハードルは低いといえます。

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